カテゴリー「小説」の7件の記事

2022.08.10

小説はnoteに書きます📝

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最近、小説書きにハマっていて、毎日楽しく書いています😊 こちらのブログにもいくつか掲載しましたが、今後はnoteに書くことにしました。

https://note.com/wajorin1118

栗原和女の名前で書いています。

まだフォロワーさんは8人ですが、これからも続けます! フォローしていただけると嬉しいです🥰

フォローやログインをしなくても、閲覧してイイねを押せますので、どうかバシバシ押していただけると励みになります❣️

どうぞよろしくお願いします。



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2022.07.27

小説、和女食堂。マッケンチーズ。

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#小説

#和女食堂

#マッケンチーズ


食べログをダラダラと書き続けて、かれこれ10年ほど経つだろうか。


最初の一年は、フォロワーを増やしたくてほぼ毎日投稿していた。自分が投稿したレストランに、先にレビューを書いていた人には全員いいねを押した。


食べ歩いてるエリアや価格帯、好みのジャンルが近そうな人は、片っ端からフォロー。タイムラインには全いいねを押すのが日課。ほとんど記事は読んでない。


そうやって一年でフォロワーさんは2000人を超えた。しかしどうやってもそれ以上には伸びてこなくて、投稿は多くて週4回、少なくて1回ぐらいに落ち着いた。


今ではフォロワー数などほとんど見ていない。気が向いたら投稿して、投稿と同時にできるだけ多くタイムラインの記事にいいねを押すだけ。


ぼくは49歳で独身のおじさんだけど、アイコンはネットで拾った20代女子の写真だ。食べログネームは「東京美食めぐり」。


年齢性別不詳の文体を心がけている。いや、ときどきわざと女性疑惑を持たれるように意識しているかもしれない。嘘をつかない程度に。


なぜなら、綺麗な女性のほうがフォロワー数が増えると聞いたことがあるからだ。


当たり前のことなのかもしれない。ぼくだって、中身が本物の人間と感じられる女性のレビュアーさんがいれば気軽にフォローする。それでいいじゃないか。


ときどきリアルでレビュアーさんたちに会うことがある。DMで食事会の誘いなどあるからだ。行ってみたかった店であったり、会ってみたい気がする人たちがいれば、その相手の男女を問わず参加する。


そのときは、「ええっ!女性かと思ってました!」と必ず言われる。ぼくは悪びれもせず、「いやいや、好きなアイドルの顔写真をアイコンにする男性なんていくらでもいるじゃないですか」と笑って開き直る。


結果的にいずれ男性であることがネットでバレても全然構わないと思っている。食べログなんて、ほんのお遊びに過ぎない。ぼくにとって、所属する社会でさえもない。


ただ、飲食店さんへのリスペクトだけは忘れないようにしている。こっちにとっては遊びでも、お店の人にとっては人生そのものだ。決して悪口は書かない。


それに、悪口を書くと自分の心にも重いものが残る。最初の頃、ある店の店内がドブのような臭いに満ちていることに関して苦言を書いたことがあった。特に何もリアクションはなかったものの、心苦しくて消してしまった。以来、苦言禁止だ。


7月のある土曜日。なぜか早く目が覚めて、池上本門寺の辺りを散歩することにした。この辺は旧東海道だから、昔ながらの商店や民家の名残がそこはかとなく漂う。


旧東海道沿いに気分良く歩いていると、住所表示が大田区中央に変わってきた。今までここまで歩いて来たことはなかった。本当に普通の住宅街で、何もない。一本向こうの池上通りに出れば、ファミレスやスーパーがあるのは知っているが。


せっかくここまで歩いてきたのだから、ここにしかない個性的なお店で何か食べていきたい。食べログを開いて、「現在地周辺」をクリックすると、10番目に気になる名前の店があった。


「和女食堂」か。食堂って素敵な響きだ。安くて、ざっくばらんで、パパッと出てきてパパッと食べられる感じ。


食べログの点数は3.15。料理の写真は庶民的でなかなか美味しそう。まあ地雷ってことはないか。ここへ行ってみよう。


「いらっしゃいませ! 暑いですねー。どうぞおかけください」


年齢不詳の女性が案内してくれた。店にはこの人しかいない。料理もサービスも全部一人でやってるタイプか。


【お品書き】

ミートボール トマトソース 200円

素パスタ 100円

マッケンチーズ 200円

ペペロンチーノ 150円

ミートソース 200円

ナポリタン 200円

キムチ素麺 280円

冷やしたぬき蕎麦 300円

たぬきおにぎり 30円

野沢菜白ごまおにぎり 30円

カレーライス 200円

ベビーリーフサラダ 150円

ズッキーニのソテー 130円

野沢菜 50円

ベーコンレタススープ 150円

愛の野菜スープ 150円

冷ほうじ茶 20円

アイスティー 40円  

炭酸水 90円

アイスカフェオレ 120円

バームクーヘン 200円


ええっ? 安すぎる。安すぎて不安なくらいだ。しかしレストラン訪問数3000を超えるぼくの経験からすると、こういう清潔感のある店がそんなに不味かったことはない。


このメニューの並びだと、ミートボールが一押しだろうね。ミートボールと、なんらかのパスタとサラダを組み立てる前提と見立てた。


「注文お願いします。ミートボールと、マッケンチーズ、ベビーリーフサラダ、炭酸水をお願いします。炭酸水は先にいただけますか?」


「了解でーす。すぐにお出ししますね」


夜ならば白ワインといきたいところだが、まだ陽も高い。よく歩いたから、冷えた炭酸水は美味しく感じるだろう。


お品書きの一番下に、「撮影は料理のみでお願いいたします」と小さく書いてある。ということは、料理ならばOKだな。


最初にきた炭酸水から撮る。次にベビーリーフサラダが来て、間もなくミートボールとマッケンチーズが届いた。


「少し時間のかかる料理だから、ある程度作ってあったんですよー。でも、本日作りたてです」


「ああ、そうですよね。そのほうが効率的だし、客も助かりますよ」


客が来る前に料理を仕込んでおくなんて当たり前なのに。いつもはゼロから作っているんだろうか。不思議なことを言う人だ。


目の前に並べられた料理は素晴らしい。確実に美味しそうな匂いがするし、見た目も良い。お皿もしっかりしたクオリティのものだ。


全体図と各皿の写真をそれぞれ2〜3枚ずつ撮る。よし、うまく撮れてるぞ。


まずはマカロニから。うう、美味しい。期待以上だ。シンプルかつストレート。プニプニしたマカロニの柔らかさと、チーズソースの濃厚さ加減がバッチリ合っている。


ミートボール。これまたド直球のザ・ミートボール。つなぎがほとんど入っていなくて、まさに肉の団子だ。添えられたバジルがよく合う。


マッケンチーズもミートボールもそれなりにしっかりした味なので、ベビーリーフサラダの合いの手が嬉しい。


炭酸水はキンキンに冷えたペットボトルがそのまま出された。「コップいりますか?」と聞かれたが、必要ない。


ちょうど満腹になったところで食べ終えた。いやはや、すごいコスパだ。


「おねえさん、ぼく食べログをやっていて、大田区の飲食店けっこう行ってるんですよ。今日食べたものは全部しっかりとした手作りのお味で、ストレートに美味しかったです! 東京美食めぐりっていう名前で書いてるんで、よかったら見てください」


「あら、それってうちのこと良い感じに書いてくださるってことかしら? めちゃめちゃ嬉しいです。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。でもご無理のない範囲で」


おねえさんは嬉しそうな顔をして、弾むような声で返事をしてくれた。うん、サービスは5つ星だな。


総合4.0ぐらいで投稿しておこうか。高級店じゃないから、それ以上高い点数なのも個人的に違和感がある。


まだこの店のレビューは7投稿しか上がっていない。レビューを書くのが楽しみだ。ぼくが高評価した店を追いかけている人も何人かいる。少しは売上に貢献できるかもしれない。


反響を確かめたいから、また3ヶ月後ぐらいに来てみるとするか。

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小説、和女食堂。冷やしたぬき蕎麦。

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#小説

#和女食堂

#冷やしたぬき蕎麦


暑いから食欲がないなんてことは、自分には起きないものと思っていた。


都内大学アメフト部出身の僕は、卒業後も食欲は盛ん。ジム通いの成果ゆえ筋肉もなんとか保っている。


しかしさすがにこの急激な暑さの中、スーツで営業まわりをするのはキツい。いくら車のクーラーが効いているとはいえ、強い日差しが止まるわけではない。


大森赤十字病院の先生にご挨拶に伺ったあと、次の予定までに時間が空いた。いつものランチは車の中でサンドイッチかほか弁を食べる程度だが、たまにはゆっくり何か食べるのもいい。


冷たい蕎麦ならツルッと食べられそうだ。「手打ち蕎麦」の旗に惹かれて入った寿々㐂は満席。近くに他の店などあっただろうかとGoogleマップを開くと、徒歩1分の位置にレストランのマークが。「和女食堂 高評価」。本当かね?


こんな場所に食堂などあるのだろうかという疑問を持ちつつ、エレベーターを上がる。


あった。確かに小さな看板が出ている。その横に、「どうぞお入りください」の手書きボードも。


恐る恐る中に入ると、誰かが歌っていた。


「あ、いらっしゃいませ! どうぞ!」


その人は歌うのをやめてすぐに、満面の笑顔で僕を席へと促す。ここまで来たら帰れない。


【お品書き】


ペペロンチーノ 150円

ミートソース 200円

ナポリタン 200円

冷出汁素麺 230円

冷やしたぬき蕎麦 300円

カレーライス 200円

ベビーリーフサラダ 150円

熱いとうもろこし 130円

ズッキーニのソテー 130円

野沢菜 50円

愛の野菜スープ 150円

冷ほうじ茶 20円

アイスティー 40円

アイスカフェオレ 120円

バームクーヘン 200円


お品書きとともに、大きなコップに入った氷入りの水と、白い冷たいおしぼりを持ってきてくれた。オッサンくさいけど、そのおしぼりで顔と首を拭かせてもらった。


30歳はもうオッサンだろうか。やってることは確実にオッサンだよな。そんなもんか。


冷やしたぬき蕎麦、あるじゃないか。これいってみよう。熱いとうもろこし? ゆでとうもろこしとか、焼きとうもろこしじゃないのか。


「すいません、冷やしたぬきと、とうもろこし、冷たいほうじ茶、以上お願いします」


「はーい。お待ちくださいね」


体幹を鍛えてきた人の声をしている。僕も声はごく稀に褒められる。体育会系の人間は、体幹がしっかりしているから声の出る人が多い。声出しも重要な練習だったし。


さっきあの人が歌っていたのは演歌だろうか。両腕をパーンと広げながら、大きなビブラートを展開していた。なかなか変わった趣味をしている。


蕎麦をゆでている鍋が吹きこぼれて、チンチンいっている。しかし野菜を刻むことに集中するあまり、火を弱くする余裕はなさそうだ。


ようやく蕎麦をザルに上げると、冷凍庫から氷を出して放り出した。氷水で蕎麦を締めているのか。そろそろ来るぞ。


「お待たせしましたー。冷やしたぬき蕎麦と熱いとうもろこしです。本当に熱いから気をつけてね」


このとうもろこし、さっき皮ごと電子レンジにボーンと入れているのが見えた。5分ほど加熱して、皮をむいて切る。それは熱いだろう。


アツアツの黄色い粒を歯でもぎ取る。うまい! ゆでたり蒸したりするよりも水っぽくなくて良い。とうもろこしの匂いを濃く感じる。


冷やしたぬき蕎麦は、具が多すぎて蕎麦が見えない。きゅうり、長ネギ、万能ネギ、カニカマ、天かすか。


乾麺にしては香りも味も良く、甘ったるくない蕎麦つゆとの絡みも絶妙だ。たくさんの具材はいずれもさっぱりとしていて食べやすい。キュウリと天かすの歯応えが心地いい。


「そのお蕎麦ね、はくばくの木曽路御岳そばっていうの。西友まで行かないと売ってないのよ。でもお蕎麦って美味しいのじゃないとダメじゃない?」


「はあ、そうですね。蕎麦屋さんが満員だったから来たのですが、十分に美味しいです」


「おお嬉しい!やった!」


「さっき、歌ってらっしゃいましたよね。演歌ですか?」


「聴いちゃった? そうよー、美空ひばり。大好きなの」


それについては特に何の知識もないので、黙ってやり過ごした。僕が生まれる前に亡くなった歌手だ。昭和の大スターということぐらいしか認識がない。


「ごちそうさまでした。さっぱりして涼しくなりました」


「あーざーっす。450円です」


少し作り笑いのような気がした。もしかするとこの人は、美空ひばりについて語りたかったんだろうか。それはちょっと無理な相談だ。


「まだまだ暑くなりそうだから気をつけてね。今度来てくれるときにはジャズを歌いながら待っていようかな」


「あはは、お好きなんですね、歌。またおじゃまします」


正直、ジャズもよくわからない。音楽にはあまり興味がなくて。カラオケ用に優里の歌を何曲か覚えてみた程度だ。「あなたの声で優里の歌を聴きたい」と、お世辞でたまに言われるので。声質がわずかに似ているらしい。


とうもろこしと蕎麦は美味しかったけれど、再びここに来ることはあるのだろうか。少し微妙な気持ちで車に戻る。


次は白金か。白金トンネルが空いていることを祈る。

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小説、和女食堂。塩昆布レタスチャーハン。

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#小説

#和女食堂

#塩昆布レタスチャーハン


暇で暇で幸せ。最愛の彼氏と同棲を始めて、そろそろ一ヶ月が経つ。


付き合い始めて4年目。なんとなくこのまま結婚するのかなとお互い思い始めているけど、そんなのいつだっていい。まだ20代が終わるまで3年もある。


わたしの仕事はパソコンさえあればどこでもできる。なんとなく彼の家にお泊まりしたまま、週の半分以上を過ごすことが増えてきて、いっそのこと2DKぐらいのところを探して一緒に住もうという話になった。


彼の通勤の便を考えると、京浜東北線がベスト。SUUMOで毎日鬼のように検索した結果、大森駅周辺の物件が予算的に合うことを発見した。


名前は知ってるけど行ったことのない町。先月半ばの日曜日。彼とふたり、不動産屋さんの車に乗って内見したマンションが最高だった。


こんなきれいなマンションに彼と暮らせるなら、本当に幸せだな。彼も同じように思ったらしい。


「今日見せてもらった中で、最後のあの3階の部屋がダントツで良かったよね。思ったより広くて新しかったし。あそこに決めない?」


「そう言うと思った! 絶対あの部屋だよね! 嬉しい!」


ああ、なんて幸せなんだろう。彼には思ったことを何でも言えるし、大抵のことは意見が合う。一人でいるときよりも、彼といるときのほうが自分らしくて自然体でいられる。


引越し先の部屋は、駅まで歩くと15分はかかるものの、目の前のバス停に東急バスが3分に一度は来る。大きなスーパーもコンビニもあるし、個人商店もたくさんある。穏やかな良い町。


ただ、レストランだけは数が少ない。ファミレスはデニーズしかないし、チェーン系のカフェはゼロ。


大森グルメのハッシュタグでインスタやTwitterを見てるけど、駅近のお店ばかりで、昼間に家から一人でわざわざ行く気にはなれない。


ある日、Twitterに表示された美味しそうなチキンソテーの写真に目を奪われた。アカウント名は和女食堂。


プロフィールを見ると、「大田区中央にある隠れ家食堂です。その日冷蔵庫の中にあるもので、1から家庭料理をお作りします」とある。


へえ、近所だな。早速フォロー。それから毎日、和女食堂さんのお料理の写真を見るのが楽しみになった。


さて今日のパソコン仕事は午前中に終わった。買い物がてら、ちょっと様子を見に行ってみよう。


和女食堂のあるらしき建物の前に着くと、エコバックをふたつぶら下げたボリューミーな女性と目が合った。


「何かお探しですか? ひょっとして和女食堂?」


「えっ、そうです。あれっ、和女さんですか?」


「そうそう。良かったらどうぞ。今空いてます。また今度でもいいよ」


そう言われたら、行ってみたくなる。ちょうどお昼どきだし、自分で今から買い物して作るより、すぐに何か食べたい。


和女さんと一緒にエレベーターに乗って、最上階に着いた。ドアが開くと、何もないスッキリとした廊下とお部屋が。


およそ食堂らしさは全くないし、あまりにも何もなくて、ここで料理をしているとも思えない。


【お品書き】


カレーライス 200円

塩昆布と豚肉とレタスの炒飯 250円

豚こまの生姜焼き 280円

ミートソース 200円

ナポリタン 200円

冷出汁素麺 230円

ゆでレタス 60円

刻んだレタス 40円

キムチ 120円

レタスとプチトマトのスープ 90円

味噌汁(玉ねぎorじゃがいも)60円

ごはん 10円

麦茶 20円

アイスティー 40円

チーズ 40円

ゴーフル 小3枚 120円


和女さんがお品書きとお水を持ってきてくれた。


今日はチキンソテーはないんだな。カレーライスは一昨日作って食べたばかり。そしたら、塩昆布と豚肉とレタスの炒飯にしようかな。麺類よりごはんが食べたいし。


「すいません、えーとこの、塩昆布豚肉レタス炒飯と、玉ねぎのお味噌汁と麦茶をいただけますか? すいません」


すいませんて何度も言ってしまうのがわたしの癖だ。彼にも注意されるけど、なかなか直せない。根本的に悪い癖だと自分で思っていないのかもしれない。


和女さんはすごい早さで麦茶を飲み干したかと思うと、猛烈な勢いでレタスを刻み始めた。あんなにたくさん入れるんだ。


胡麻油の匂いが部屋中にして、たまごとごはんを炒める音とともに、フライパンをあおる姿が見えた。


あおりまくってるなあ。これはパラっとするだろう。最後にお醤油の焦げる匂いがちょっとして、お皿にモリモリとよそってくれた。


「どうぞー。多かったら先にタッパーにお取り分けしてもいいよ」


明らかに多い。タッパーをお願いして、食べる前に半分そちらに入れた。帰ったら家の冷凍庫に入れて、明日のお昼ご飯にしようかな。


いただいてみると、塩昆布の味と旨味がバランス良く全体に回っていて、とても和風で健康的な美味しさを感じた。炒飯というより焼き飯かな。全然ギトギトしてないし、お肉も柔らかくて優しい味。


「お肉の下味に鯛醤を使ったの。いい匂いがするでしょ。レタスと長ネギは最後に入れて、ほとんど火を入れてないんだけど大丈夫だった?」


「美味しいです! こんな炒飯だったら、毎日食べたいですね。どうしたらこんなに美味しく作れるんですか?」


「あーこれは中村和成シェフのレシピだから。インスタライブ見たらみんな作れるよ。ハプニングキッチンで検索してね」


ハプニングキッチン、ラボンヌターブル、塩昆布レタスチャーハンと書かれたメモを渡してくれた。親切な人。


「すいません、今度彼と来てもいいですか? 本当に美味しかったです」


「もちろんですよ! 大歓迎!」


彼が帰ってきたら、早速話してみよう。わたしは料理も好きだけど、外食も大好き。ご近所にこんな居心地のいいお店があるなら、常連さんになりたい。


「あざますー。330円です」


「あら、タッパー代は?」


「いいの。余ってるから」


「すいません、ありがとうございます」


またすいませんて言ったなあ、わたし。でも今の場面では、すいませんと言うべきだろう。買ったら100円はしそうなちゃんとしたタッパーをくれたんだから。


「すいませんてことないよ。来てくれてありがとうね。幸せオーラが出てる人がお客さんになってくれて嬉しいな。チキンソテーは大体いつもあるから、また来てね!」


「あれっ、チキンソテーの写真を見て来たの言いましたっけ?」


和女さんはただ微笑んでドアを開けてくれた。嬉しくて不思議な出来事。早く彼に話したくてたまらない。

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小説、和女食堂。トモサンカク焼肉重。

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#小説

#和女食堂

#トモサンカク焼肉重


ああ、腹が減った! 24時間365日ずっと自宅で原稿を書いていると、今が何曜日の何時なのかわからなくなる。というか、オレには関係ない。


腹が減ったら、コンビニで買ったパンを食べるか、冷凍食品をチンして食べるかの二択だ。デリバリーは月に2回までと決めている。毎日頼んでたらカネがいくらあっても足りない。


たまにライブを観に行くのだけが、唯一の贅沢。なのにこのご時世じゃ、いいライブもそうそうやってない。いつになったら大物の外タレがバンバン来日するんだろうか。オレはアデルの歌を生で聴きたい。


眠いのか眠れないのかわからない宵の口。息抜きにTwitterを覗いた。


「和女食堂🍅 @wajoshokudou 2分

本日、北のうまみ牛もも霜降りトモサンカクを使用した焼肉重がございます。早い者勝ち!」


珍しく和女さんからやる気を感じた。いつもは客に来てほしいのか否かわからないぐらい投げやりなツイートしかしない人なのに。


オレの家からの徒歩圏内で、手作りの家庭料理を食べられるところは、最早みやいし食堂と和女食堂しかなくなった。散歩がてら行ってみるか。


「いらっさい。珍しいひと来た。嬉しゃす。どぞ」


なんか言葉遣いがパソコン通信っぽいんだよな。一体彼女は何歳なんだろう。案外、オレと変わらないのかもしれない。


【お品書き】


トモサンカク焼肉重(ナムルつき)1000円

ガチンコ!インド式チキンカレー 600円

塩昆布とレタスの炒飯 250円

豚こまの生姜焼き 280円

ミートソース 200円

ペペロンチーノ 150円

素麺のサラダ油炒め 200円

ゆでレタス 60円

刻んだレタス 40円

キムチ 120円

レタスとフランクフルトのスープ 250円

レタスとプチトマトのスープ 90円

味噌汁(玉ねぎorあおさ)60円

麦茶 20円

アイスティー 40円

チーズ 40円

ベビーカステラ 5個 150円


ここはもう、焼肉重でしょう。インド式チキンカレーは前に食べたことがある。あれはマジでうまかった。


メニューにレタスの文字が多い。サミットでレタスが安かったんだろうな。


この前、サミットでバッタリ彼女を見かけた。あまりにも真剣に肉のパックを見比べていて、声をかけたら悪いかと思うほどで。やっぱり食への執念が並外れているんだろうね。


「えーと、焼肉重と、キムチと、うーん、ゆでレタス。レタスとプチトマトのスープ、キムチ、麦茶ください」


「おいっす」


やっぱり見た目より年齢が行ってるよ、こりゃ。ドリフの全員集合世代だ。間違いない。


野菜を摺下ろす音がしたあと、焼肉のタレを煮詰める匂いがした。タレから作るのか。エバラ焼肉のタレとかじゃないんだな。


レタスを引きちぎる音、湯が沸騰する音、野菜を切る音。最後に肉を焼く音と匂いが強烈にして、大急ぎで全部テーブルに並べられた。


「めっちゃ美味しいんすよ、この肉。熱いうちにどうぞー」


「あっ、はい。もうこの匂いでわかりますよ。いただきます」


おおおおお、うめええええ。焼肉屋で食うより旨いかもしれない。柔らかい肉をベールのように包み込む、下ろしたてで新鮮な風味のする玉ねぎとニンニクのタレ。市販のタレでもなく、焼肉屋のようでもなく新しい。


内側が紅い重箱はズルいよな。肉が余計に旨くなる。その横にぎっしり並んだ色とりどりのナムル。これはもう不変のマリアージュってやつだ。


ゆでレタスは本当にレタスをゆでただけで、胡麻油と醤油がタラっとかかってる。それだけでこんなに旨いのか。


なんだか自分の中の活力が掘り起こされてくるのを感じる。肉パワー+ワジョパワーすげえ。


レタスとプチトマトのスープを飲んだら、見た目より遥かに旨味と爽やかさがある。素晴らしい。何が入っているんだ?


「そのスープ美味しいよね。伊勢醤油本舗の鯛醤で味付けしてるの。あとは野菜のお味だけ。プチトマトと長ネギと万能ネギと千切りしたレタス。トマトはいい出汁が出るわ」


なるほどな。魚醤の旨味は偉大だ。鯛醤というのは初めて聞いた。ナンプラーよりも日本人好みでスッとなじむ。


「鯛醤で作ったさあ、唐揚げがすごく美味しいの。今度作ってあげるね」


作ってあげるねってどういう意味なんだ。オレは彼氏じゃねえ。そもそもどう考えてもオレに気があるような態度でもない。少し話したあとは、スマホを持ってすぐさま別室に消えた。パソ通世代はスマホにもハマりやすいのだろうか。


「ごちそうさま。すげえうまかった。和女さん天才」


「あざーすー! 1290円です。天才って言われちった。うひょ!」


ああもう間違いなく同世代。昔2ちゃんねらー、今やひろゆキッズ。ひろゆきさんの最近のご活躍について語り合ったら、話が尽きないだろう。しないけど。


肉、うまかったな。なんか目が覚めた。ミニストップで白くまのハロハロ買って帰ろう。今日は贅沢した。気分がいい。原稿がんばろう。

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2022.07.22

小説、和女食堂。カニカマたまご焼き。

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#小説

#和女食堂

#カニカマたまご焼き


遅くなってしまった。もう駅ビルのレストラン街も閉まってる。松屋やバーミヤンに行くほどの気力もない。


わたしが食事に求めるものは、まず美味しさ。そして快適さだ。


いくらか広めのテーブルと椅子に、ゆったり座りたい。そしてガチャガチャとした広告など目に入れず、食べるものに集中したい。


疲れてるおじさんたちが、背を丸めて食事している姿も見たくない。なぜならそれは、疲れ過ぎた自分の写し姿だから。


「大森駅 300m 夜10時以降入店可」で検索しても、出てくるのは居酒屋さんとラーメン屋さんばかり。下戸でしかも食べるのが遅いわたしにはハードルが高い。


食べログを閉じると、Twitterに赤いバッジがついていた。インフルエンサーの友人がわたしをタグ付けしてくれたツイートに、いいねがついたらしい。


もう3日も前のツイートなのに、まだいいねがつくなんて。インフルエンサーの人ってすごいんだな。


ついでにタイムラインを見ると、和女食堂さんのツイートが一番上に出ていた。


「本日、夜食あります。ただしリピーターさんのみ。DMください」


和女さんだ。助かる! 和女食堂だったら、わたしの住むマンションから歩いて1分とかからない。


すぐさまDMを送ると、30秒で返事が返ってきた。


「ご連絡ありがとうございます。ぜひお待ちしております!ゆっくりお越しくださいませ」


和女さんは実際に会うと普通に友だち言葉になるのに、オンラインではなぜかいつも敬語だ。わたしのこと忘れてるのかな? と一瞬思ったが、リピーターだと認識しているから受けてくれたんだろう。


「こんばんは、遅くにすみません」


「らっしゃいませー。お疲れサマンサ。はい、おかけください」


熱めの白湯と、お品書きを持ってきてくれた。


【お品書き】


ウインナー 1本30円

カニカマたまご焼き 120円

おにぎり 10円

レタスとフランクフルトのスープ 250円

たまごサンド 100円

ゆでたまご 30円

目玉焼き 30円

もりそば 200円

グリーンサラダ 30円

S&Bホンコン焼きそば 120円

味噌汁(玉ねぎorあおさ)60円

牛乳 100円

麦茶 20円

アイスティー 40円

チーズ 40円

六花亭大平原 130円


相変わらず普通の家みたいというかなんというか。前回来たときは、白身魚のソテー ブールブランソースを作ってもらった。名前はしゃれてるけど、もろにフランス家庭料理の趣だった。そこがいい。


レタスとフランクフルトのスープってすごく気になる。でも今の気分は和食。おにぎり食べたい。おにぎりなら2個食べられる。


「すいません、おにぎり2個と、カニカマたまご焼き、あと、ウィンナーを2本お願いします。あおさのお味噌汁とアイスティーも」


「おにぎりは具なしだよ。いい? たまご焼きはカニカマと万能ネギとマヨネーズ入り。アレルギーない?」


カニカマと万能ネギとマヨネーズのアレルギーの人なんているのかな。そういえば、マヨネーズは絶対食べられないと言った友だちがいたわ。


ともこ。彼女のことを考えながらボーッとしていたら、さささっとお皿とお椀が並べられた。


「おにぎりは下手なの。まだ練習中」


なるほどね。あまり上手とは言えないかも。でもとても良いお海苔を使っているのがわかる。


漆黒の海苔をパリパリと鳴らし、ふっくらとした白米にたどり着く。ちょうどいい塩加減。


「塩加減、バッチグーですね。どんなお塩を使ってるんですか?」


「伯方の塩だよ。は・か・た・のっ塩!」


懐かしいCMソング聴けた。伯方の塩か〜。こんなに美味しかったかな。


深く切り目を入れたウィンナーは、香ばしい醤油の味がした。それが白米とよく合って美味しい。塩気が強めで、運動会の日のお弁当のよう。


カニカマたまご焼きは、フレアスカートのようにヒラヒラとした形に仕上がっている。カニカマとネギの色が、スカートの絵柄にも見える。


こちらは塩分控えめで、フワフワしたお味。出汁の効いたお味噌汁とともにいただくと、まるで実家のごはんのような安心感。


今のわたしは、思いっきり疲れた顔を晒していて、思いっきり食べることしか考えていない。何の飾りもない、どシンプルな和女食堂のインテリアに癒される。こうしたかったんだ。


「ごちそうさまでした。たまご焼き、ホッとする味で美味しかったです」


「ありがとござます! 300円です」


ちょっと本当の笑顔で笑って言えた。一日の終わりにこんな笑顔ができるなら、まだまだわたしはがんばれる。


「無理しないでね。ゆっくりお風呂に入るんだよ。おやすみなさい」


「あ、はい。和女さんもご自愛ください。おやすみなさい」


やっぱりそんなに疲れた顔をしていたのかな。それとも、最近あった出来事に気付かれたのだろうか。


もう今日は寝る前に泣きたくないなと考えながら、家に帰る。そうだな。お風呂に入ってすぐに寝よう。Good night and have a nice dream.

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2022.07.20

小説、和女食堂シリーズ。ケチャップライス。

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仕事の合間に和女食堂に立ち寄った。以前から評判を聞いて、行く機会を伺っていた隠れ家食堂だ。


「作り置きで良かったら、すぐ作りますよ」。ふくよかな女店主が言う。


お品書きを見ると、和洋中の料理名がいくつか並んでいる。まるで中学生が書いたかのように素朴で丸みのある手書き文字。


【お品書き】


カレーライス 200円

ハンバーグ 400円

牛丼 450円

ミートソース 200円

冷やしたぬきそば 300円

もりそば 200円

ネギたまご炒飯 50円

ケチャップライス 100円

ウインナー目玉焼きごはん 150円

おにぎり 10円

たまごサンド 100円

マッシュポテト 100円

オニオングラタンスープ 100円

グリーンサラダ 30円

牛乳 100円

麦茶 20円

アイスティー 40円

チーズ 40円


なんだろう。安い。そして牛丼だけ妙に高い。「どうして?」と聞くと、「池上の松屋で買ってきたから」とのこと。正直なものだ。


しばし悩んだ末、ケチャップライス、マッシュポテト、オニオングラタンスープ、チーズ、麦茶を頼んだ。


「ほい」


女店主はオーダーの確認もせずにキッチンに立ち去る。


まな板で野菜をバンバン切る音。フライパンで何かを炒める音。電子レンジの作動音と、チン!という元気なレンジアップの合図。


途中、冷蔵庫を開け閉めする音がバタンバタンと騒がしげにする。けっこう大雑把な人なのかな。料理の仕上がりが心配になってくる。


驚くほど早く、すべての料理が同時にきた。


「写真を撮ってもいいですか?」と聞くと、「撮ってもいいに決まってんじゃん」と、砕けた返事。歓迎というよりは、「バッカじゃないの?」という顔でしかない。


なるほど。今どき撮影許可を乞う客も少なくなったものだろう。


ひとしきり撮影をして、光の加減を確認する。まだ十分に日差しのある時刻。赤いケチャップライス、海松色の皿、マッシュポテトの上のピンクペッパー。すべての彩りが美しい。


「いただきます」


聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟く。女店主はもうスマホに夢中だ。有線の白いイヤホンをしてニヤニヤと画面を見ている。


そういえば、この店はBGMがかかっていない。おそらく、店主がYouTubeを見るための邪魔にならないようにだろう。あのニヤニヤ顔は、BTSというよりは、ひろゆき切り抜きといったところか。


ふと壁を見ると、「キシロフォンレコードのオムニバスCD販売中! 店主も一曲歌っています♪ "お肉の歌"だよ! いちまい500円」というチラシが貼ってある。


お品書きと同じ文字だ。この人、歌も歌うんだな。あの体格なら、さぞかしいい声が出るだろう。まあ買わないけど。今日が初対面だし。いわば何の義理もない関係だ。


よし。ケチャップライスからいってみよう。


あ、美味しい。けっこう薄味なのに、しっかり旨みがある。かといって化学調味料の味はしない。この薄くスライスしたウィンナーから出た出汁だろうか。


ネギは玉ねぎではなくて、慎重に細かく刻まれた長ネギだ。たまごは柔らかさとポロポロした食感が両立している。ケチャップは一切ベタついていない。ちょうど白米に吸い付く分だけケチャップが加えられ、焦げ付く前にパラリと仕上げたようだ。


所作は大雑把だったが、料理は繊細と言っていい。


このケチャップライスの箸休めに、クリームチーズをいただくと尚一層コクが出る。


その横に、乱暴に引きちぎられたグリーンリーフにプチトマト。これは全くいい加減な印象。単なる彩りか。まあ彩りも大切ではあろうけれども。


ひとしきりケチャップライスに集中したところで、オニオングラタンスープをひと口。おっ、これは旨い。意外と時間をかけて作ったんじゃなかろうか。


きれいな焦茶色に染まった玉ねぎ自体の水分がスープになっている。トッピングのパンはカリッカリに焼かれていて香ばしい。そこへ加わる、粉チーズと黒胡椒とオリーブオイル。とてもこの目の前にいるYouTubeリスナーが作ったとは思えない出来栄えだ。


濃厚なオニオングラタンスープの合間に、マッシュポテトを口に入れる。ああなんだこれは、優しい味だな。良いバターと牛乳を使って、丁度いい粘度まで煮詰めている。


先ほどのケチャップライスもそうだが、案外きっちり詰めるべきところは詰める人と思った。そしてこの店、愛想はないが居心地はいい。勝手にやってくださいと言わんばかりだ。


ゆっくりと味わうつもりが、あっという間に平らげてしまった。素直に美味しかった。まあそうでもなければ、こんなマンションの一室で食堂を続けられるはずもないか。


「ごちそうさまでした」


「あざす。360円でふ」


でふ? よく見たら彼女、何か食ってるところだった。紺色のワンピースの胸の部分に、パン屑のようなものが落ちている。パン食ってYouTube見てたのか。自由気ままなものだ。


しかし不思議とそんなざっくばらんな態度に好印象を持った。また来たい。できれば明日にでも。


しかしそれではまるで、ボクが和女食堂に一発でハマってしまったと思われるばかりではないか。とてもではないが恥ずかしい。


女店主がこちらの顔を忘れた頃にまた来よう。そういえば、この人が和女さんなのかな。それを尋ねるのもまたにしよう。


「ありがとうございました。明日から海老フライも出しますよ。作りたてタルタルソースが自慢です。絶対美味しい」


おっと。言い切ったな。これって明日も来ていいということか? 


「そうですか、美味しそう。また来ますね」


大人の余裕ある笑顔でそう言って、ドアを後にした。やべえ、海老フライか。大好物だ。


ボクはiPhoneでスケジュールを確認して、明日の段取りを頭の中で計算し始めた。


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