« 小説、和女食堂シリーズ。ケチャップライス。 | トップページ | 小説、和女食堂。トモサンカク焼肉重。 »

2022.07.22

小説、和女食堂。カニカマたまご焼き。

7c7c5e43fbcf4d65b2035be5ba0dea6f

#小説

#和女食堂

#カニカマたまご焼き


遅くなってしまった。もう駅ビルのレストラン街も閉まってる。松屋やバーミヤンに行くほどの気力もない。


わたしが食事に求めるものは、まず美味しさ。そして快適さだ。


いくらか広めのテーブルと椅子に、ゆったり座りたい。そしてガチャガチャとした広告など目に入れず、食べるものに集中したい。


疲れてるおじさんたちが、背を丸めて食事している姿も見たくない。なぜならそれは、疲れ過ぎた自分の写し姿だから。


「大森駅 300m 夜10時以降入店可」で検索しても、出てくるのは居酒屋さんとラーメン屋さんばかり。下戸でしかも食べるのが遅いわたしにはハードルが高い。


食べログを閉じると、Twitterに赤いバッジがついていた。インフルエンサーの友人がわたしをタグ付けしてくれたツイートに、いいねがついたらしい。


もう3日も前のツイートなのに、まだいいねがつくなんて。インフルエンサーの人ってすごいんだな。


ついでにタイムラインを見ると、和女食堂さんのツイートが一番上に出ていた。


「本日、夜食あります。ただしリピーターさんのみ。DMください」


和女さんだ。助かる! 和女食堂だったら、わたしの住むマンションから歩いて1分とかからない。


すぐさまDMを送ると、30秒で返事が返ってきた。


「ご連絡ありがとうございます。ぜひお待ちしております!ゆっくりお越しくださいませ」


和女さんは実際に会うと普通に友だち言葉になるのに、オンラインではなぜかいつも敬語だ。わたしのこと忘れてるのかな? と一瞬思ったが、リピーターだと認識しているから受けてくれたんだろう。


「こんばんは、遅くにすみません」


「らっしゃいませー。お疲れサマンサ。はい、おかけください」


熱めの白湯と、お品書きを持ってきてくれた。


【お品書き】


ウインナー 1本30円

カニカマたまご焼き 120円

おにぎり 10円

レタスとフランクフルトのスープ 250円

たまごサンド 100円

ゆでたまご 30円

目玉焼き 30円

もりそば 200円

グリーンサラダ 30円

S&Bホンコン焼きそば 120円

味噌汁(玉ねぎorあおさ)60円

牛乳 100円

麦茶 20円

アイスティー 40円

チーズ 40円

六花亭大平原 130円


相変わらず普通の家みたいというかなんというか。前回来たときは、白身魚のソテー ブールブランソースを作ってもらった。名前はしゃれてるけど、もろにフランス家庭料理の趣だった。そこがいい。


レタスとフランクフルトのスープってすごく気になる。でも今の気分は和食。おにぎり食べたい。おにぎりなら2個食べられる。


「すいません、おにぎり2個と、カニカマたまご焼き、あと、ウィンナーを2本お願いします。あおさのお味噌汁とアイスティーも」


「おにぎりは具なしだよ。いい? たまご焼きはカニカマと万能ネギとマヨネーズ入り。アレルギーない?」


カニカマと万能ネギとマヨネーズのアレルギーの人なんているのかな。そういえば、マヨネーズは絶対食べられないと言った友だちがいたわ。


ともこ。彼女のことを考えながらボーッとしていたら、さささっとお皿とお椀が並べられた。


「おにぎりは下手なの。まだ練習中」


なるほどね。あまり上手とは言えないかも。でもとても良いお海苔を使っているのがわかる。


漆黒の海苔をパリパリと鳴らし、ふっくらとした白米にたどり着く。ちょうどいい塩加減。


「塩加減、バッチグーですね。どんなお塩を使ってるんですか?」


「伯方の塩だよ。は・か・た・のっ塩!」


懐かしいCMソング聴けた。伯方の塩か〜。こんなに美味しかったかな。


深く切り目を入れたウィンナーは、香ばしい醤油の味がした。それが白米とよく合って美味しい。塩気が強めで、運動会の日のお弁当のよう。


カニカマたまご焼きは、フレアスカートのようにヒラヒラとした形に仕上がっている。カニカマとネギの色が、スカートの絵柄にも見える。


こちらは塩分控えめで、フワフワしたお味。出汁の効いたお味噌汁とともにいただくと、まるで実家のごはんのような安心感。


今のわたしは、思いっきり疲れた顔を晒していて、思いっきり食べることしか考えていない。何の飾りもない、どシンプルな和女食堂のインテリアに癒される。こうしたかったんだ。


「ごちそうさまでした。たまご焼き、ホッとする味で美味しかったです」


「ありがとござます! 300円です」


ちょっと本当の笑顔で笑って言えた。一日の終わりにこんな笑顔ができるなら、まだまだわたしはがんばれる。


「無理しないでね。ゆっくりお風呂に入るんだよ。おやすみなさい」


「あ、はい。和女さんもご自愛ください。おやすみなさい」


やっぱりそんなに疲れた顔をしていたのかな。それとも、最近あった出来事に気付かれたのだろうか。


もう今日は寝る前に泣きたくないなと考えながら、家に帰る。そうだな。お風呂に入ってすぐに寝よう。Good night and have a nice dream.

|

« 小説、和女食堂シリーズ。ケチャップライス。 | トップページ | 小説、和女食堂。トモサンカク焼肉重。 »