辻井伸行さんのピアノコンサート。
渋谷オーチャードホールに辻井伸行さんのピアノコンサートを観に行きました。タイトルは、「音楽と絵画コンサート印象派」。
ルノワール、ゴッホ、ドガ、北斎などの絵画が、演奏に合わせてスクリーンに映し出されていました。単純な発想のようでいて案外良かった。
辻井さんの演奏は、真の天才。ある程度天才だろうと予想して行きましたが、遥かに上を行く天才でした。
会場を丸ごとどこか別世界に連れて行ってしまったよ、あの人は。自分が渋谷にいることを忘れてしまった。こんな気持ちになったコンサートは、玉置浩二さんと辻井さんだけ。
今日の演目は、ドビュッシー、サティ、ラヴェルなど。わたしはあまりクラシックに詳しくなくて、知ってる曲は半分ぐらいだった。あとの半分は、複数のピアニストの演奏を聴き比べてみたことがあるぐらいには好きな曲だった。
そんな程度の自分ではありますが、わたしから見て辻井さんの演奏はかなり独特の揺らぎが終始感じられ、まるで大自然のふところに飛び込んだような多幸感を得られる素晴らしい演奏でした。
まずリズム感がすごい。独特すぎる。100分の1秒だか10分の1秒だか、よくわからんぐらい絶妙な揺らぎを繰り返している。まるで催眠術にかかったように酔い痴れてしまう。もちろん明らかなズレなんてものはないのです。しかし一定ではない。ここが天才ポイントその1。
そして天才ポイントその2。強弱の加減がこれまたすごく独特。一般的に上手いと言われるピアニストの演奏と全く解釈が異なる。「ええっ!強弱が違うだけで全然違う曲に聴こえるよ」と思う場面さえある。
しかしこれも譜面を無視しているわけではないと思う。たぶん譜面通りなんだけど、描いている絵が違うから音が変わるのです。
もちろん超絶上手いのですが、決して技巧に走ったり、お約束の演出をしたりしない。「ババーン!キメキメ!拍手!」みたいなのと次元が違う。もう会場ごと自然界に行っちゃってるから、童心に戻るしかないのです。
辻井さんのピアノの音は、水の流れのよう。究極的に磨き上げられた水の中に飛び込んで、心地よい水流に揉まれ、ひたすら流されて行くような至福感。
あるいはまた、昔ながらの重い列車に乗って、田園風景の続く車窓を眺めるような解放感。
そんな、誰の心にもある原初的幸福感を爆発させてくれる演奏なのです。すごすぎない?
初めてテレビで辻井さんを見たとき、ずいぶん色気のある人だなあと思ったことを覚えています。今日、本人を見て、そして演奏を聴いて、こっれは全世代にモテまくりだろうと改めて思いました。
実際来ている客層は、40〜70代で、特に60歳前後の人たちが多かった。男女比は半々。
31歳の辻井さんと同世代の人たちは少ない。意外とキャーキャー言われてないみたい? しかし実生活ではモテモテでしょうね。天才だしお金持ちだし、清潔感があってすごい色気だよ。
あと、神界とのパイプがすごく太い。最初は「神がかりだな〜」ぐらいに思ってましたが後半、完全に神と一体化してました。ヤバヤバです。こんなものを見てしまって良いのでしょうか。
神界の音というのは不思議と音階が気にならないものなのです。わたしは中途半端に絶対音感があるので、普段は音の上がり下がりをずっと無意識に受け取りながら音楽を聴いているのですが、辻井さんの演奏は音階を意識せずに聴くことができてとても楽で気持ちよかったです。
後から知ったのですが、辻井さんのコンサートはチケットが取れなくて有名なのだそうですね。
この前YouTubeを見ていたら、オススメに辻井さんが出てきて、「辻井伸行か、いいなあ一度コンサート行ってみたい」と思いついたんです。チケットサイトを覗いたら、たまたまオーチャードホールのチケットを売っていてすぐ買えました。
なんですぐ買えたんだろう? しかもすごく前のほうの席でした。「辻井さんのコンサート行くんだ」と友人たちに言ったら、「なんでチケット買えたの??」とみんなに言われました。不思議。ご神縁でしょうか。ありがとうございます❤️
本当はどんな人なのかなあ。お話ししてみたい。
たった2週間前に同じオーチャードホールで、同じスタインウェイのピアノでダイアナ・クラールを観ましたが、同じピアノでも弾く人でこんなに色彩が変わるということを知ったのも面白かったです。
さて来週も楽しみなコンサートが😍 今年はまだまだ終わらないよ。
#辻井伸行
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