築地木村家のこしあんパン。
体感的に、この世界で売られている餡子商品の八割方が粒あんのように感じている。
どうしてだろう。漉し餡のほうが美味しいでしょう?
わたしは決して持論を押し付けるタイプではない。だがしかしこれだけは譲れない。餡子は粒あんよりも漉し餡が優れているという紛うことなき真実。
餡子商品の購入を検討する段階で、それが粒あんなのか、漉し餡なのか、定かではない場合は必ずお店の人に訊ねる。「これは漉し餡ですか?」と。
八割方の返答がこうだ。
「いえ、粒あんです」
大いなる失望の瞬間。わたしの円い肩が、玉三郎ばりの撫で肩になる。もう二度とこんな気持ちは味わいたくないんだ。
築地からいらしたお客様が今日、お土産をくださった。
「ワジョさん、粒あんと漉し餡のどちらががお好きですか?」と聞かれた。
期待は禁物だ。「漉し餡です」と平常心を装いながら答えた。お客様はこう仰った。
「ああ良かった。漉し餡のあんぱんをお持ちしました。築地では人気なんですよ」
I feeeeel soooo happy!
賭けに勝った気がした。ツイてるぞ。ワンダホー!
築地木村家といえば、ずいぶん昔に銀座木村家から独立して、古い窯を大切に使っている街場の名店という評判を聞いていた。いつか行ってみたいと思っていたお店のひとつだ。
なんという素晴らしい断面。適度な密度の硬めのパンに、水気をわずかに多めに含んだ漉し餡。その表面には星のようにケシの実が広がっている。
お手本のように美しく、美味しい。昭和生まれの心を掴む味。あんぱんを持つ手が感動で震える。
あんぱんの入っていた紙袋を見ると、こんなキャッチフレーズが。
菊かほる
ひのもとのいやさか
木村家
80余年の秘伝のお味!
伝統がありすぎて意味がわからない。「いやさか」なんて言葉は500年ぶりぐらいに聞いた。「嫌さか」じゃないよ「弥栄」だよ。「栄えておめでとう!」って意味。つーことは、日本バンザイ! ってことか。
気分はまさに、日本バンザイ! 日本にいて良かった。漉し餡食べられて良かった。
これからもわたしの人生の幸福度は、漉し餡との遭遇率に正比例する予定です。
あと何年生きるのかわからないけど、生きてるうちに漉し餡いっぱい食べたい。粒あんはなくていい。漉し餡だけが我が命の灯火だ。
#こしあん
追伸。カウンセリングに手土産のお気遣いは必要ございません。手ぶらでお越しください。皆さん手ぶらです。
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