ついに行きましたよ。サローネグループで最もハイクラスな立地、オシャレ感もトップクラスのリストランテ。イル テアトリーノ ダ サローネです。
広尾の日赤通り、広尾側から行くと日赤病院を通り過ぎて246号線高樹町交差点に出る100m手前の左側。恵比寿駅からも渋谷駅からもタクシーで800円ぐらいです。
何度も写真で見たことのある金色の看板を確認。黒い手すりの階段を降りて、地下一階へ。
ああ〜〜、ここがテアトリーノかあ。感慨深い。さすがにオシャレだわ。
サローネグループのオシャレ感というものは、全くもって上っ面ではなく、どちらかというと体育会系の骨太な格好良さが根底にある。その理由は人だ。
経営陣の皆さんをはじめ、メンバーの皆さん一人残らずビシッと骨太でいて優しい。サービスと舞台とお料理のすべてから、深い愛を感じる。
テアトリーノは、そういうサローネグループの良さを凝縮したようなお店。予想以上にここにいる時間のすべてが感動的で、ただ単に美味しいというだけでなく、まさに店名の通りに劇場だと感じた。
ここに来たこと。シェフやサービスマンの方々と話したこと。食べたもの。飲んだもの。他のお客さんたちの雰囲気。漏れ聞こえる会話。食器やインテリアや料理の盛り付け。目に入るすべて。
押し付けがましいところは一切ないけれど、すべてが印象的で、一生忘れられないような時間を過ごした気がした。人生の中で、こういうお店に来るべき運命に出会えて良かった。
しかしこの感覚を人に伝えるのは難しい。超豪華というより、どちらかというと隠れ家的。ハレの日のご馳走には違いないが、なんでもない普通の日にこそ、この料理を食べる幸せを味わいたい。ツボが絶妙なんです。
ともあれ幸せになりたい気分の人はここに来れば良い。簡単に言うとそんな感じ。
さて始まりました。
35歳未満の若手シェフを対象としたコンペティション「RED U-35」でファイナリストとなった山口シェフ自らが出迎えてくださり、カウンター席の奥へ。特等席ありがとうございます。
山口さん、すごく人間的にしっかりとしたオーラです。わたしよりずっと歳下ですけど、既に中身の濃い人生を送ってきて必然的にここに立っている感じがしました。
北イタリアで修行なさってきて、ピエモンテ地方のお料理を得意とする方です。
先日から渋谷バカリのシェフの北野さんがこちらに異動なさって、現在はダブルシェフで新しいステージを作り始めたそうです。
お二人ともとても顔付きが良い。イケメンなんて今ふうの言葉で表現したら悪いかなと思ってしまうぐらい素敵。
支配人の石原さんは、気遣いの達人。言わずともしてくたさったサービスの数々に、わたしは密かに気づきました。こういうさりげないサービスができる人が一番すごいと思う。
何より間合いがいい。間合い、大事。すごく大事。
前菜は定番の三品。
グリッシーニ(生ハムのせ)
パプリカとアンチョビ(バーニャカウダ風)
アマレッティ(リコッタチーズとピスタチオのマカロン)
いつもこの石ころが入った箱を写真で見ていて、「どこまで食べられるものなんだろう?」と思っていました。
正解は、「石ころ以外は食べられるよ!」でした(笑)石も実は食べられるものでできてるとかアリかな!?と呑気に思ってたもんで。
カブのズッパは、山形県かほく町産のミラノ蕪を使用した、すり流しのようなホクホクのスープ。
上に乗っているのはフォアグラ。フォアグラの強い旨みにも負けない蕪の美味しさが際立っていました。
この器がまた摩訶不思議で。ボーリングのボールみたいだった。触ると温かい。保温性があるっぽい。
つぶ貝のインサラータは、さっぱり系のサラダ。
エストラゴンをきかせたつぶ貝、青海苔のジュレ、大麦のサフラン香り付け、黒米、イタリアンパセリ、にんにくなどのコンビネーション。
つぶ貝、この味付け最高だな。ハーブとオイルを纏うだけでこんなに美味しくなるのかな。様々な風味と食感のあるものと合わせて、一口ごとに楽しめる。サフランの香りがついた大麦が特にお気に入り。
牛テールの皮なめし職人風は、肉のジュとカカオのソースをベースにしたニョッキ。
カカオ!? と驚いたけれど、前半はカカオの味は特に感じることなく、濃厚なフォンドボーのような印象。後半でなぜかカカオの風味が現れる。甘ったるさはなく、なんとも上品で後味が良い。
アッコモダート アッラ ジェノヴェーゼは、ホウボウのフリット。
トマトを煮詰めたソースがほろ苦くて美味。ホウボウの中に、松の実、レーズン、ブラックオリーブなどの詰め物がしてあり、結構強めの味なのに、白身のホウボウの味わいをきっちり引き立てている。ミクロン単位の薄衣がパリサクで最高に美味しい。完成度高いなあ。
マグロのカラスミのスパゲットーネは、セモリナ粉の手打ちパスタ。
山口シェフの修行したイタリアでは、ボラではなくマグロのカラスミもよく使われるそうです。
ボラのカラスミより口当たり優しく、旨みが濃くて後味は軽快です。辛みを効かせた味付けが素晴らしい。このパスタもまた不思議なもので、食べ進めるうちに味に変化がありました。後半に進むにつれて、魚の味が主張を強くしていった。
どのお皿もそうですけど、器が巨大なので料理が少なく見えるかも? 実はかなりのボリュームなんですよ。もうこの辺でおなかが満たされつつ、メインの猪までは油断なるまい。
待望の猪、来ました!
猪のロースト ヴァンブリュレのサルサ。
長崎は対馬の猪。ソースはバンブリュレ(スパイスの入ったホットワイン)を煮詰めたもの。付け合わせは、レンズ豆をグローブで香りづけして煮たものと、ちぢみほうれん草。
あまりにも鮮やかな紅色で、「写真の色調調整ゆえ?」と思われそうですが、実際こういう色です。
聞かなかったけど、エージングしたんでしょうかね。それとも猪とはこういう肉なのか。余計な水分が抜けて赤身の濃さが際立っていました。
極めて野性味を感じるが、臭みは全くなく、咀嚼する喜びが長く続く。心地良い弾力が歯を撫でる。美しいお味。
これで終わりかと思ったら、ニョッキが出てきた。
トルテッリーニ イン ブロート。
テアトリーノの定番メニューだそうです。一通り料理を食べたところで、締めの汁物でおなかを温かくするという、日本料理における赤出汁のような役割を果たしているらしい。
魅惑のブラウンスープは、12時間4種類の肉を煮込んだものです。土瓶蒸しのように、お猪口に注いで飲みます。
うへああああああ、美味しい!! 心も体も溶けますな。こんな美味しい液体は世の中的になかなかない。スッポン鍋のような微妙なヌルヌル感があった。なんだか体に良さそう。美人になりそう。
デザートは、柑橘とチョコレート。
高坏みたいな食器で来たよ。面白い。フォトジェニックですね。インスタグラムなどに如何でしょうか。わたしもあとでインスタに投稿しよう。インスタフォローしてくりゃれ。I.D. wajorinっす。
目の前に置かれただけで良い香り。
真ん中のチョコレートアイスを主役に、ウイスキーで香りづけしたホワイトチョコ、金柑煮、ナッツ、オレンジピールなどが散らしてあります。
食後はカプチーノをいだだきました。石原さんがラテアートを描いてくださった! 動物の着ぐるみを着ている女の子ですって。かわいい❤️❤️❤️
ああ、楽しかった。
前半の料理でファーっと胸が開いて、邪気みたいなものが全部出ていって、ラストの猪でドカーンとエネルギーを入れてもらった感じがした。めちゃくちゃ現実的で即効性のあるヒーリングと言えましょう。元気出ました!
カウンター席で料理の仕上げや、さりげないオペレーションの確認、各人のアクション、お客さんたちのリアクション、すべて見えるから面白い。
4席の個室はエントランスから直接入れるので、他のお客さんに会うことがなく、有名人の方などには重宝されているようです。もちろん有名人じゃなくても使えますよ!
これからの自分の人生の思い出を、またここで重ねたいと思いました。いやそんな大袈裟なものではなく、生きてるって良いなってときどき確認しに行く場所としてかな?
好きなお店ほど長文になる傾向、直す気ありません(笑)長文おつきあいありがとうございます!
#青山