自由が丘mondo(モンド)。一週間熟成させた、モンスター真鯒づくし。
モンドのソムリエ田村さんから、知らせが入った。一週間前に釣り上げた65cm級のモンスターマゴチの特別コースを用意しましたと。一週間の熟成期間を待って、今夜こそが最高の食べ頃よ。ってね。
田村さん自らがこういう連絡をしてくるときは、相当自信があって、相当ものすごいものを出してくるに決まっているのだ。行かない手はない。ここしばらくの倹約生活を返上して、二つ返事で出席! 幼なじみの聖子ちゃんが一緒に行ってくれた。
なんでもマゴチは65cm級が最大で、田村さんが今回釣ったのも、そこの釣り船で今年一番の大物だったのだそうだ。他の種類でいえばもっと大きな魚はあるけれど、マゴチでこの大きさを釣り上げたことで、人生に何度もないような気持ちを味わったと話してくれた。ああ、釣りって感動的なものなんだなと、私にも伝わってくるものがあった。
ソムリエか釣り師なのか既にわからない地点をひた走る田村さん。ちなみに田村さんは今発売中の東京カレンダー2013年6月号に「釣りバカソムリエの休日」というドキュメンタリーレポートで登場なさってます。カッコイイ。
熟成鯒とサンブウコのフリット。
アヒョー! いきなり熟成鯒のうまみがフリット状態で強く。私の心の喜びメーターがブーン!と振り切れた。思ったよりずっと肉質がしっかりとしていて弾力がある。その厚みのある身のすべての繊維に旨味が閉じ込められていて、噛むとパチンパチンと味が弾ける。なるほど熟成ならではだなー。
サンブウコはニワトコの花というもので、どこかで見たことのある花。モンドさんの庭の花を摘んでフリットにしているのだそう。へーー。まるで野草のような優しい苦みがほんのりとあり、花の甘みと香りもある。庭の花でこんなお料理ができるなんて。
熟成鯒のカルパッチョ、ウドとブラッドオレンジ。
一週間熟成した魚とは思えぬ爽やかな香り。生臭さ一切なし。
カルパッチョにしてはやや厚みのある切り方で、ムッチリとした色気をムンムンと味わえる仕様。味わい深い塩気とうまみ。ブラッドオレンジとディルの葉の香りと味。ウドの柔らかさと何げなさ。
すべてがパーフェクトだった。なんという絶妙でおしゃれなバランス。宮木シェフの料理の才能は、ますます進化のスピードを上げているんじゃないかなと感じた。
鯒のカネーデルリ。
カネーデルリというのはイタリアのパン団子みたいなもの。濃厚な出汁のスープがすごい。ただ濃いだけではなく、澄んだ心地よさと深いうまみが共存している。そこへ鯒のパン団子。ふわふわと楽しく、心を喜びで満たしてくれた。このような形になってさえ、鯒の熟成したうまさが生きている。
熟成鯒のスパゲッティ、ケッパー、トマトのコンカッセ、イタリアンパセリ。
美味しいーーー! 鯒は身だけでなく、皮をカリッと焼いたものも入っている。一口ごとに違う味がした。なおかつ、どれもが引き合う一体感がある。鯒もケッパーもトマトもパセリも、主張の強い味でいて、お互いの良いところを助け合っている。スパゲッティに妙に鯒の出汁がしみしみで美味しすぎだったのは、宮木さんの気合いでしょうか。なんだか異常なほど気合いを感じた。
牛尾のラグー、ニョッキ。
ニョッキは実に店ごとの違いが出やすい料理だ。モンドのニョッキは時に強く、時に優しく、時に攻撃的だ。今日のニョッキは、そのすべての要素がきれいに収まっている感じがした。
牛のシッポの味をとことん追い詰めて、蕗の風味を自信を持って乗せている。ムニュムニュに柔らかいニョッキ本体は、「オレはなんにもしてないよ」と言いながら手を握りしめてくれるようなイケメンオーラが出ていた。
これは惚れる。
熟成鯒の炭火焼、アスパラガスと。
本日の〜メイン〜!! バッキバキの炭火焼きが来ました! 香りだけでノックアウト! なんというかぐわしさ。炭火というと荒々しい印象ですが、芳醇なとでも言いたくなるような豊かな香り。
プリップリの弾力ある厚い身にナイフを入れると、引っかかりもせずスーッと切れる。繊維がとてもきれい。白身魚によくあるポロポロの細かいほぐれ具合とは別の、ワイルドで背筋の伸びた筋肉感。
焼きトマトをつぶしてソースがわりに乗せても良し、手前の菜の花のペーストと両方まぜても良し。先ほどのカルパッチョでも感じた、塩気とうまみの融合感。水っぽくなく、全く硬さを感じるでもなく、素材の良いところだけを残す。一週間熟成のハリとツヤが生きていた。
本当に本当に美味しかった。田村さんの釣りの才能と、宮木さんの料理の才能。どちらも必要だった。お二人の今までの経験と力量がなければ成し得ない奇跡のコースだったと思う。
心から感動したし、このようなお料理に出会えるということの意味を考えずにはいられなかった。つまりは多くの縁やタイミングに恵まれているということであり、そんな自分の人生は全く悪くないのではないかとさえ思えた。
今夜の料理は、だいぶ大きな力をいただいた。
リコッタブファーラのムース、ブラッドオレンジ、パンテレッリアのマスカットレーズン、ピスタッキオ 。
うへー、デザートまで美味しすぎる。このリコッタチーズでできたクリームっぽいもの、私にドンピシャの味。あまりにも美味しくて全身溶け出しそう。デザートは人の気持ちを幸せにしてくれるためだけに存在しているのかしら。これはナカジャーさんが作ってくれました。ありがとう。
最高のお料理を味わいながら、幼なじみの聖子ちゃんと、ゆっくり気を張らずに話をできた。最近のこと、昔のこと、友だちのこと、話があっちこっち飛んでもお構いなし。なんでも通じる安心感(笑)
素晴らしい時間をありがとう。聖子ちゃん、宮木さん、田村さん、ナカジャーさん、そしてお隣の席に偶然居合わせたナンシーさんも。
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