超絶級インド料理ホームパーティー。サトジリに行ってきました。
サトジリに行ってきました。
サトジリとは、完全紹介制インド料理ホームパーティー。レストランではありません。しかしながらその内容はというと、日本インド料理界の有名シェフ達をもってしても師匠と冗談抜きに呼ばれる人、サトウさんの手料理がふんだんに振る舞われる饗宴なのであります。
お食事会というより、本物のもてなしの精神が込められた、料理を通して心の徳を積める場所といっていいかと思う。
私は香取薫先生のインド料理教室ペイズリー20周年記念パーティーで、サトジリの作り手サトウさんと知り合った。そこからツテをたどって、ペイズリーのスタッフの方を通して連絡を取っていただき、晴れて国分寺にあるサトジリにたどり着いた。(サトウさんのお食事会のことをサトジリと呼ぶ)
サトウさんはプロになるつもりは全くなく、インド料理つながりで知り合った人をこうしてときどき招き、極上の料理をふるまっている仏様のような人。
まず、開催に先がけて、アレルギー等を連絡すると、当日のメニューが招待状メールに書かれて届く。もうそのメニューを見た時点で卒倒しそうだった。
◇ムリガタニー
赤レンズ豆のスープ
◇ラッサム
ムングダルのラッサム
◇ニンジンとサトイモとカボチャのコロンブ
アーンドラ風野菜カレー
◇アル・ダム
ベンガル風ベーシックなジャカイモのカレー
◇メカジキのミーン・コロンブ
スパイシーな魚のタマリンド・カレー
◇鶏手羽先マサラ
鶏手羽先のスパイシーな煮込み
◇VADA
ウラッド・ダルをすり潰した生地の甘くないドーナツ
◇アルゴビ
ジャガイモとカリフラワーの汁気のない炒め物
◇キャベツのトルカリ
ジャガイモとキャベツの香味炒め
正式には、ここにすべてのスパイスと材料の名称が明記されていた。もう既に美味しそうすぎる。これをすべて一日で食べさせてもらえるのだろうか? 信じられない。大御馳走だ。
開始時間ちょうどに着くと、すでに5種類ほどのカレーが出来上がっていた。全員揃うまで他のカレーを作りながら待つことになった。
建物の階段を下りた時点で美味しそうな匂いがいっぱいで、頭がクラクラした。この食事のため、朝から何も食べずに来た。他のメンバーに聞くと、全員そうだという(笑) そうだよね、そうなるよねーっ。
私たちが到着してから、手羽先のカレーを作り始めたサトウさん。驚くほどシンプルな手順で、見ているとまるで材料をただ入れて煮ているだけにしか見えない。それが実は驚愕のテクニックなんだな。
材料の吟味、カット、下準備、鮮度の良いスパイスの調合、そして流れるような調理を可能にする配置。すべてが整ってから、余裕たっぷりに調理を進める。途中で止まってはいけないんだな。抜群のリズム感。スパイスと素材の絶妙な香りと音、手に響く感覚などで、実は緻密な流れが組まれていることがなんとなく私にもわかった。
スタンバイオッケーーイ! 驚いたことに、ごく一般的な家庭にあるような道具ばかりだった。中華鍋や木べら、ステンレス鍋とレードル。こんな普通の道具で、こんなに豊かな味を生み出せるなんて信じられない。人間の技術ってすごい。インド料理ってすごい。サトウさんすごい。
更に驚いたのは、遅刻して最後に到着した人がドアを開けると同時に、「これはできたてを食べてほしい」という6品目のカレーが完成したこと。これも計算なのかなあ? それとも今日は偶然だった? 見事すぎて意味がわからない。
一番上の写真は、◇キャベツのトルカリ ジャガイモとキャベツの香味炒め。
サトウさんの腕にかかると、たった10分ぐらいでできるサブジ。「いや〜、これ簡単なのよ。キャベツ切って、揚げたじゃがいもとトマトとスパイス入れて5分ぐらい煮るだけ」なんて仰いながら作る。実際全くその通りの手順なんだけど、私たちが作っても絶対こうならないよ!!という見事な仕上がり。
作っている段階で、香りのグラデーションがすごい。香りだけで悩殺される。大袈裟じゃなくて本当にクラクラする。
油を熱した香り、クミンを入れて弾ける香り、野菜を入れた香り、次の野菜を入れた香り、合わさる香り、その上にスパイスを加えた香り、スパイスが花開く香り、仕上げのハーブの香り、すべてが熱せられて世界が完成する瞬間の香り。
それらのタイミングが、サトウさんはすべて完璧なのだ。料理する段階でこんなにも物語が生まれている。奥深く、五感を揺さぶられるなあ。
このキャベツのトルカリ。ライスとセットでお弁当にして売ってほしい。一人で二人前ぐらいペロリといけちゃいそう。最高に美味しいおかずだった。
◇ラッサム ムングダルのラッサム
ラッサムはただスープのようにすすっても美味しいし、他のカレーにまぜてもいいし、ライスにかけてもいいし、ワダにつけて食べても美味しい。店によってだいぶ味が違う。
サトウさんのラッサムは超絶級の美味しさだった。これがラッサムの本当の味なんだなあと、たましいの奥底で気づかされた。言葉じゃなくて、感覚でしか伝わらないこと、料理にはたくさんある。その気づきが深ければ深いほど、言葉にはならない未知の領域に触れることができる。官能的な体験だ。
サトウさんに、「これだけのラッサムを作るには、どれだけ沢山のイマジネーションと経験を重ねたのですか?」と聞いた。
最初は、「ただ普通に作ってるだけだよ」と仰っていたけど、あとで思い出したかのように、「あるとき突然、作れるようになる日が来るんだよ。それは偶然のようにやってくるんだけど、一度できたらもう一生それができるようになるんだ」とポロリとお話してくれた。
なんだかそのお話は、すべてのことに通じる大切なことなんじゃないかって思った。
今日私は、たくさんの気づきをいただいた。美味しい料理に出会う縁の奇跡、もてなしの心の真意、その実践を継続するということの尊さ、食事を人とともに囲むことの大切さ、作り手への感謝と、食べ手が受け止めて発する力。人と人が出会うこと。運命と人が出会う不思議な瞬間。一瞬の大切さ。など。などなど。
言葉や態度を超えた、五感とたましいのすべてを使って、人は人や世界のすべての現象とコミュニケーションしているんじゃないかなあって。実感としてそう思った。
◇ムリガタニー 赤レンズ豆のスープ
サトウさんが「とても辛いよ」と仰ったスープ。サトウさんのお料理全部に言えることなのだけど、辛い料理も口当たりが優しく、口の中は辛くならない。あとから胃を中心に、内臓全体を温め始め、やがて全身の血肉をポポポポッと活性化する。暑くてたまらない。しかしとても心地よい暑さだ。まるでヨガをやった後のような爽快な温かさがある。
豆のスープは一般的に地味な存在になりがちだが、このスープはすごいインパクトだった。香りを楽しみ、口に入れてみると、思った以上の旨味とスパイスの広がり。食べ進めるうちに、更に旨味と香りが重なって、味の世界の扉が一枚、また一枚と開き続ける。花開くような味のスープだ。うんんんまい!
◇ニンジンとサトイモとカボチャのコロンブ アーンドラ風野菜カレー
具がグズグズになってない粋な野菜カレー。でも味はしっかりついている。野菜だけでどうしてこんなに豊かな味が出るんだろう?
◇鶏手羽先マサラ 鶏手羽先のスパイシーな煮込み
「ワジョリーナさんが鶏肉お好きと聞いたから作ってみたよ」と仰ってくださった料理。まさにー!! どストライクな味っっっ! でした!
これは私たちが到着してから30分ぐらいで作ってくれたカレー。かなり大きめに切ったトマト等の野菜が、あっというまにちょうど良く煮詰まって、のけぞるほどかぐわしいカレーソースになる。それがサッと素揚げしただけのチキンに、短時間の煮込みながらよく味が染み込んでいる。技術ですねー。
◇アル・ダム ベンガル風ベーシックなジャカイモのカレー
これはやばかった。やばかったやばかった。美味しすぎて目玉が飛び出て壁にぶつかりそうだった。クリーミーな食感のカレーソース。複雑な妙味を作るスパイスと、キリッとまとめ仕上げるほうのスパイスとのバランスが巧みすぎる。ジャガイモのかたさもちょうどいい。
◇メカジキのミーン・コロンブ スパイシーな魚のタマリンド・カレー
魚の味がっっっ! こんなに生きる料理があるものでしょうか!? このカレーになることができたメカジキは幸せ者です!! 油の量と、魚の味、野菜の深み、スパイスが引き立てる全体の指揮。超絶的な芸術です。
第一回目のお皿をよそったところ。サトジリはセルフサービスで、鍋から好きな分だけよそります。ライスはジャスミンライス。
手前が魚のカレーで、奥がじゃがいものカレー。左奥が手羽先のカレー。それぞれ全く違う個性があり、非常に味が際立っている。
◇VADA ウラッド・ダルをすり潰した生地の甘くないドーナツ
揚げたてのワダを出してくれた! 中はフワフワ、外はカリサク。重くなく、甘くなく、どこまでも素朴で味わい深い。
◇アルゴビ ジャガイモとカリフラワーの汁気のない炒め物
これもアッという間に作って出してくれた。こういう汁気のない料理は、なかなか有名インド料理店でもベストな状態で出てきにくい。サトジリでは下拵えから仕上げまで一気に作るから、材料自体のエネルギーとスパイスの味が、両方とも最高の状態で提供される。これが意外とないのだわ〜。ありがたい出会い。
仕上げのチャイ。
このチャイだけでもお店が開けるんじゃないかと思うぐらい美味しい。クセのありすぎない紅茶の味もいいし、カドの取れた円い味の砂糖も良い。どこにでも売っている牛乳なのに、煮詰め方の加減で最高級のミルクの味になっている。
デザートの焼き菓子。
高幡不動「フジウ」のお菓子をたっくさん揃えておいてくださった。上質な素材を使用し、賞味期限が短くてもよけいな物をできるだけ入れないように配慮して作られているのだそうだ。確かに、素材以外の雑味のようなものがない。シンプルで、甘く、鼻をくすぐる自然な香りが脳を心地よく刺激する。
100年前のレシピで作られたロールケーキ。こちらも「フジウ」のオリジナル。
昔ながらの味といえば味。ただそれだけではない。一体何が入っているのかなあと思うほど、素材が合わさったときの織りなす味の妙味が素晴らしい。甘すぎないのに、甘いものしっかり食べたという充足感がある。
これでサトジリのフルコースは終了。
満たされ具合がハンパない。おなかがいっぱいなのも事実だし、何より心と脳が溢れかえるほど幸せに満ちていてはち切れそう!
料理には人を幸せにする力がこんなにもあるんだなと、改めて思った。
なんだかんだ、ずいぶんゆっくりおじゃましてしまった。幸せな時間は早く過ぎるなあ。また今度、ディープな桃源郷を求めてサトジリにおじゃましたい。
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