« 西麻布トルナヴェントで北イタリア郷土料理のランチ。 | トップページ | ミュージアムカフェ、ミュージアムショップ。 »

2009.06.20

国立新美術館「野村仁 変化する相-時・場・身体」

R001150802_2

トルナヴェントでランチをしたあと、てくてくと六本木を歩いて国立新美術館に行った。Yさんも一緒に行ってくれた。

途中、偶然にも出雲大社 東京分祀の前を通りかかり、参拝。いやいや、この世に偶然はないっていうからね。必然よ。

お目当ての展覧会は、「野村仁 変化する相-時・場・身体」 知らない人だったけど、六本木界隈の美術館を検索して、開催中の展示の中で一番興味を引かれた。

野村仁は1945年に兵庫県に生まれ、京都市立美術大学を卒業。同大学専攻科修了後、放送局に勤務しながら現代アートの制作活動を続ける。手がける表現方法は、写真、立体、平面、インスタレーション、映像、本、譜面、CDなど多岐にわたる。現在、京都市立芸術大学大学院教授。ソーラーカーレースへの参戦を長らく続け、鈴鹿サーキットで優勝。自作のソーラーカーで、アメリカ大陸を横断したこともある。

そんな謎の人、野村仁。美術館の案内ページを見た限りでは、ネイチャー系の写真家なのかなあと思った。まあこれが行ってみてビックリ。写真にしろ立体にしろ音声にしろ、「こ、これは一体何!?」と人を戸惑わせる、偏執的なまでの視点とこだわりと労力のかけ方。よく見りゃ根底には独自の哲学が脈々と息づいている。

ものすごくアホらしいことにこだわっているかと思えば、一周して胸を突くような着地点がフッと落ちてきたりする。このタイムラグがエクスタシー。しかも考えてわかるオチではなく、感じ取ることしかできない。この男、ただものではない。かなりのド変態ではないかと思った。(もちろん賞賛の意味で)

R001151505

たとえば、最初に展示してある作品は、巨大な段ボールを積み上げただけ。この段ボールが重力と時間の変化によって変化していく姿自体がアートなのだそうだ。最終的にグズグズになってゴミ置き場にしか見えないような写真が飾ってあった。これでいいのか!? いいんだよな〜〜〜。

次の部屋は、月の軌跡を定点撮影して、五線譜に重ね合わせたプリント。そんな写真が広い部屋に延々と並んでいる。この譜面を音に起こした音声が部屋に流れていた。

聴いたこともないような音楽。ヒーリング音楽のようでもあり、ノイズのようでもある。この音が好きなのか、そうじゃないのか、自分で判断をくだせない。あまりにもカテゴライズできない未体験の音。こんな感覚、滅多にない。

その隣にあったのは、1970年代の録音テープ。3台のリスニングマシーンが置いてある。私が聴いたテープは、お笑い番組が流れている居酒屋で別の店に電話をして、バスでその店に向かうまでの音を延々と録音している音声だった。

隣のテープを聴いていたYさんに、「何の音だった?」と聞いたら、「銀行でお金を振り込んでる音」であると。顔を見合わせて笑ってしまった。面白すぎる。大真面目にそんな音を録音している70年代の男。でも聴いてみると当時の日常の空気が生々しく体感できて、なんだか体が熱くなるのだった。なぜ?

その次の部屋には、太陽の軌跡を一年間撮り続けて完成した、メビウスの輪のような渦巻き。これが立体作品と写真で展示してあった。神秘的といえば美しいけれど、この人の手にかかるとただ美しいだけでは済まされない何かが出てる。ヌンヌンと出ている。ひとすじなわではいかない。

R001152503

奥の部屋は、飛行機の翼に、宇宙からやってきた隕石が乗っかってる立体作品。その周辺に、宇宙の発生をイメージしたガラス作品。大きな花瓶のようなガラスの中に、きのこのように小さなガラスがくっついている。タイトルが、「宇宙はきのこのように発生したか」。誰に聞いてるんだ。私?

映像作品を上映するブースが2つあり、その一つでは1972〜1973年の街の光景を撮影したモノクロ写真を秒速2枚程度の速度で再生していた。いま目録を見たらこの映像作品は5時間あるらしい(笑) どうりでいつまでも終わらないと思ったよ・・・。

この写真がまた曲者で、露出も水平も何一つ合っていやしない。「写真を撮るときはテーマを明確に」なんていうセオリーもまるで無視。なんでこんなところ撮ってるの?と思うような、狙いのわからない写真。それが連続すると、その場、その時の現実感が雨雲のように広がってくる。晴れ間のようじゃなくて雨雲なんですが。

ずっと見ていたいような気もしたけれど、適宜切り上げて次の部屋へ。そこには1億年前の古木が化石化したものが置かれていた。パワーストーンなんてもんじゃない。すごいエネルギー。この人はどうしてこんなものを手に入れることができるんだろうか????

R001152701_3

続いての部屋は、「植物を育む言語又は'反照している'を見る」という作品。赤、黄色、緑、青・・・さまざまな色の光に照らされた植物の鉢植えが並んでいる。植物はどんな色が好きで、どんな色だとすくすく育つのか?という実験らしい。ダラーンと伸びきってる葉もあれば、ジッと固まっている葉もあり。キッチュな照明の色がたまらない。

最後には彼がアメリカ大陸を横断したソーラーカーの実物が展示してあった。ソーラーカーにロマンを持つなんて、ちょっと普通の人のようでもあり一瞬ホッとしたが、鈴鹿サーキットで優勝しちゃったり、アメリカ大陸まで横断しちゃったり、そこまでいくのはやっぱり普通じゃない。アーチストのお遊びレベルじゃなくなってる。

どこからどう切っても普通じゃない人。こんな人が生きていて、きっと今も何かにこだわり、芸術を作り続けていることに感嘆した。

このような、ある意味デンジャラスな展示を、たった千円で見ることができて良いのでしょうか。誰にでも無制限に。しかも国立の美術館で。世の中捨てたもんじゃないと思いました。

|

« 西麻布トルナヴェントで北イタリア郷土料理のランチ。 | トップページ | ミュージアムカフェ、ミュージアムショップ。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 西麻布トルナヴェントで北イタリア郷土料理のランチ。 | トップページ | ミュージアムカフェ、ミュージアムショップ。 »