三番町小川美術館、有元利夫展。
千代田区三番町の小川美術館へ、「有元利夫展」を見に行った。
先日いらした、アートの造詣が深いお客様が、「ワジョさんきっとお好きかと思って」と昨年の展覧会のカードを私にくださった。その方はパウル・クレーのファンで、同じくクレーのファンの私に有元利夫を薦めてくれた。
ビンゴですねーっ。昨年、テレビ東京の「美の巨人たち」で有元利夫の特集を見て、ぜひともこの人の絵を見てみたいと思っていたのだ。クレーと有元利夫、特に似ているわけではないのに、なんで私が好きだとわかったんだろう?
有元利夫は、疎開先の岡山で生まれ、東京の谷中に育ち、東京芸大を卒業後、電通でデザイナーとして活躍したのち、洋画家となった人。1985年に38歳の若さで肝臓癌のため逝去した。
バロック音楽を愛し、リコーダー演奏を嗜み、作曲もした。会場内では静かに彼の作による「RONDO」という曲が流れていた。神秘的で幻想的。こういう音楽、たまらなく好き。
私の好きなパウル・クレーもラウル・デュフィも有元利夫も、音楽を愛した画家という部分で共通している。そういう画家が好きなのかなあ。私も音楽に夢中だからね。
小川美術館では、有元さんの命日である2月24日前後に毎年展覧会を開いているらしい。今年2009年は2月23日(月)から3月7日(土)まで。あと一週間ぐらいですね。
ここにこんな素敵な美術館があるなんて知らなかった。三番町の立派なビルの一階に、ひっそりとした入り口がある。看板の左横、ちょっと美術館の入り口とは思えないような、中の見えない黒い鉄の自動扉。本当に入っていいのかどうか一瞬考えてしまった。
しかし一歩中に入ると、計算し尽くされた美しい空間が広がっている。しかも入場無料なんですよ。なんで?? いちおう芳名帳にワジョリーナと書いてみた。書かなくてもいいらしい。
中には絵が10枚ほど飾られている部屋が三つ四つ。最初の通路に飾られている小さな絵を数枚見ただけでドップリ感動してしまった。全く素晴らしい。
彼の作品は頭部が小さく首から下の大きい女性の絵が多い。彼の名前を知らなくても作品を見たことのある人は多いと思う。こちらに少し絵が出ています。どのモデルも無表情に近いのに穏やかな優しさに包まれていて、宗教画のような光を感じる。
なぜか布や袋を持っている人の絵が多い。20リットルサイズのゴミ袋ぐらいの布を、両腕を斜め前に伸ばして持っているのだ。これが一体何の意味があるのかはわからなかった。そのうちわかるのかな?
他に印象的なモチーフは、花びら、雲、階段、金色の光、マス目の床やテーブル、幕。幻想的な光景の中に、計算や規則性が入り込んでいるところが面白い。色彩的にも、ポスターのようだったり、写真のようだったり、わざとかすれやよごれを加えていたり、さまざまなアイデアが見られる。アイデアを作品に昇華する際の完成度が非常に高く、さりげなく美しい。
額縁にもかなりのこだわりがあったようで、初期は自分で額縁まで作っていたのだそうだ。一枚の絵として飾られるとき空間の中でどう見えるかを全部計算していたのかもしれない。元デザイナーだし?
しかしいざ彼の作品を目の前にすると、そういった技法的な情報はぶっ飛んでしまい、ただただ女神の宿る芸術に陶酔してしまう。BGMのハープの調べと相まって、この世とあの世の境目にいるような気持ちになってくる。
最後の部屋にたどり着く頃にはもう私は、酩酊状態に近かった。これ以上見たらやばいのではないかと思うほどキテしまった。本当にすごい。この人ほどスピリチュアルな存在もなかなかいないのではないか。そう思う。
ちょっと立ってられなくなったので、第一室のノグチテーブルのところに座って休憩。今日この日の感動は、一生忘れられないと思った。
受付で「RONDO」のCDを売っていた。1枚800円。嬉しいおみやげ。
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コメント
初めまして(^-^)
昨日、たまたま拝見し、どんなに長く待とうと、自由が丘のサロンに予約をさせて頂こうと思っている者です
その時は何卒、宜しくお願い致します\(__)
千代田区三番町は私が中学から10年間通学していたところですが、美術館があるなんて全く知りませんでした ちょうど3月に同窓会があるので 是非とも立ち寄りたいと思います(^o^ゞ
またお邪魔させて頂きます♪
投稿: キャサリン | 2009.02.27 08:40
ワジョさん、こんにちは〜!
ご無沙汰してます。。お元気ですか?
ワジョさんも、有元利夫さんの世界、好きになってくださったんですね〜♪♪
私、学生時代にお世話になった方が、有元さんと親しくて
その方の紹介で版画の刷り師の工房でアルバイトしていたことがあり、
その工房で、有元さんの版画の作品集を制作していたときに
有元さんがサイン入れに立ち寄られて、作業のお手伝いをしたことがあるんです!!
とても独特の、深く大らかで温かい雰囲気のかたで、ほんとうに素敵でした。。
それから程なくして亡くなられたので、ショックでしたけど
お目にかかれたときは、お元気そうでした。。。
小川美術館も、ほんとうに不思議で素敵な場所ですよね。
他の画廊でも、有元さんの作品を何度もみていますが、小川美術館のあの空間で観るのは、また格別な味わいです。
有元さんの立体の作品も、素晴らしいのですよ〜♪♪
久しぶりに、私もまた有元さんの絵に会いに行ってきます☆☆
お知らせくださって、ありがとうございました!!
投稿: みちみち | 2009.02.27 14:11
こんにちは。ご無沙汰してました。
私が有元利夫を初めて知ったのは、二十歳の時だったけど、画集を見ただけで大好きになってしまった。作品もそんなに多くないのに、いまだに本の装丁とかに使われているのをよく見かけるから、この人のファンって多いんだろうなって思う。彼が早くに亡くなられたのは本当に残念だった。
有元さんの赤い画集があるんだけど、そこに彼の生前の様子や話が載ってるので、見てみると面白いよ。
ワジョりんなら特によく分かる話もあると思うなぁ。
話は変わるけれど、来月から私も仕事を始めます。まーたんの一本の電話が私に仕事を始めさせたんですよ!
投稿: ゴン | 2009.02.28 00:17
キャサリンさん
はじめまして!
コメントありがとうございます!
三番町に通学なさっていたんですねー。
小川美術館は確かに、外から見たら全然そうとはわかりません。
そこがまたアート仕掛けなのかもしれませんね。
ぜひ楽しんでらしてください。
ちょうどあさっての月曜日に4月分の予約を受け付けますので
ご予約をお待ちしております♪
みちみちさん
わーい、お久しぶり!
おかげさまで元気ですよ〜。
みっちゃんもお元気ですか?
なんと、本物の有元さんに会われたことがあるのですね。
いやー、それは貴重な経験ですね。
ご本人の雰囲気も、絵と同じように大らかなんですねー。
素敵だわぁ。
ゴンさん
おおおっ! ついに始動ですね!!
おめでとうーーー。
今度詳しく聞かせて!
ゴンさんがそんなに前から有元さんのファンだったなんて、
さっすがだね。
赤い画集って、「女神たち」っていう本かな?
投稿: ワジョリーナ | 2009.02.28 02:04
こんにちは。
ワジョさんブログの内容の素晴らしさに確信を得て、実際に今日、美術館に行ってきました☆
行って本当に良かったです。ありがとうございました。
少しお腹一杯になりすぎるくらい、満喫しました。有元さんの絵は近くから見たり、遠くから見たり、見ていると少しずつ印象変わりますね(自分の気持ちが変わっていくのか・・)。素敵な時間を過ごせました☆
投稿: ようこ | 2009.03.07 22:34
ようこさん
いらしたんですね!
感動を分かち合えて、とても嬉しいです。
そうそう、見る角度や距離で印象が大きく変わりますよね。
近くで見ると色んな工夫が見えて面白いですね。
投稿: ワジョリーナ | 2009.03.10 10:49