山形県酒田市、土門拳記念館。
延々と松林の中を通り抜けて、タクシーで30分ほど走る。目的地は酒田の土門拳記念館。(←フラッシュが開くページです。びっくりしないでね)
土門拳は、言わずと知れた日本を代表する世界的な写真家。仏像や寺院を撮影したライフワーク、「古寺巡礼」が一番有名でしょう。
またこの記念館自体が魅力的で。建物の設計が谷口吉生。入口前の銘板と、内部に展示された土門拳の年譜、チケットとポスターのデザインが亀倉雄策。中庭の彫刻がイサム・ノグチ。「流れ」と題された奧の庭の設計が勅使河原宏。「拳湖」と記された銘石は草野心平の筆。
そんな人たちの名前を聞くと、ミーハー心がうずきます。湯野浜から酒田へ行くには、空港を一度通り越して行かなくてはならないので、旅としては効率が悪い。けれどもここだけは、どうしても行きたかった。
広大な公園を奧に進み、湖のほとりにその建物を見ただけで、ガーンと心を打たれた。かっこいい。やっぱり来てよかった。まだ入館もしてないのに、そう思った。
ちなみにタクシー代は、湯野浜温泉から土門拳記念館までで5千円。ご参考までに。空港からならば、バスが出ています。
バリッとしたコンクリート打ちっ放しの建物の中に入ると、ぐるりと回廊に陽が射して意外に明るい。中庭のせせらぎと、周囲の緑の木々も美しく目に映る。
この中庭のイサム・ノグチの彫刻、「土門さん」というタイトルなのだ。せせらぎの流れる石段にボーンと立ってる石が土門さんっ。芸術的だなー。
感心して歌王に、「ほらこれが、有名な芸術家のイサム・ノグチが作った彫刻だよ。土門さんなんだって」と話しかけたら無視された。親子の呼吸で読み取ると、「意味ワカンネ」という返事だったと思う。
勅使河原宏が作った奧の庭は、まさしく感動的。「流れ」とは、よくぞ題したものだ。美しい流れが永遠に続くような空間を作り出していた。この時も場所も、過去から続いていて、これから永遠に流れが続くんだな。
またしても歌王に挑む。「この部屋の奧の庭、勅使河原宏が作ったんだって。とても見事だから見てきて」。すると歌王は、部屋にある写真パネルだけを見て出てきた。うーむ、これは、「興味なし」という意味だな。手強い人だ。
土門拳の作品の展示は、「室生寺」と「こどもたち」の二つのパート。
「こどもたち」は、昭和20年代の東京の子どもたちの遊びを写したもので、ちょうど歌王と同世代の人たちが被写体だ。紙芝居、まりつき、ゴム跳び、相撲などの遊びの光景が躍動感いっぱいに写されていた。
歌王は何度も「懐かしい」と言い、ときに声をたてて笑いながら見て回っていた。よかった、楽しんでくれて。歌王もちょうどその頃、東京の子どもだったのだ。
奈良の「室生寺」は、土門拳が最も愛したといわれる寺。四季折々の景色と、迫力ある仏像の写真が、大きなパネルで展示されている。
なるほどな。自分の目で見るよりも、仏像の見方がわかる気がした。寺という場所の濃密な空気感も伝わってくる。面白い。時代的な違いもあるのだろうか。今の時代のように軽い空気ではない。特別な気品を感じる。
けっこう感動して、写真集を買ってしまった。重いけどがんばって持って帰るぞー。
ここの売店の人も受け付けの人も、みんな優しくて親切な人ばっかりだった。山形の人はいい人だ。
(もっとつづく)
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